好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


「大丈夫」


また涙の余韻が冷めやらず、再び熱いものが込み上げてきてしまった私は、優しく響く伊藤君の声に、ハッとして顔を上げた。


「え?」


「浩二は、大丈夫だ。アイツは、そんなに弱い人間じゃない。きっと、三池を最後まできちんと見送ってやりたいと、それが最後に自分ができることだと、そう思っているんだろう」


「最後に、自分ができること……」


「アイツなら、大丈夫。でも――」


「でも?」


「おそらく、全てが終わったら大泣きするだろうから、そのときは佐々木、君が側にいてやってくれ。俺には、それが出来ないから……」


伊藤君の、少し鋭い感じのする切れ長の目が、ちょっと寂しそうに細められる。


そうだった。


伊藤君は、浩二の一番の親友。


私が知らない浩二を、伊藤君は知っている。


浩二のことを、たぶん私以上に、一番良く理解してくれている人だ。


そうだね。


今は、ハルカをきちんと見送ってあげなくちゃ。


私にとってもそれが、最後に、ハルカにしてあげられること。


「うん。まかせておいて。浩二が大泣きしたときの特大ハンカチの役割、しかと、この佐々木亜弓が承りました!」


おどけてガッツポーズを作る私に、伊藤君はあの少年のような笑顔を返してくれた。