そう、私は大丈夫。
大丈夫じゃないのは、浩二の方だ。
浩二が、涙を見せない――。
あの日、
私が、リンゴジュースを買って病室に戻ったとき。
もう既に息を引き取ったハルカを、まるで、壊れ物を扱うみたいに大切そうにその腕に抱き、
全身で、慟哭しているのが分かるのに、
それでも、浩二は、涙を見せなかった――。
医師の正式な死亡診断が下り、駆けつけたご両親が泣き崩れるその傍らで、涙を見せずただ静かに佇んでいた浩二。
こんなときは、泣いたっていいのに。
婚約者の浩二が泣いたって、誰もとがめたりしないのに。



