好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


そう、私は大丈夫。


大丈夫じゃないのは、浩二の方だ。


浩二が、涙を見せない――。


あの日、


私が、リンゴジュースを買って病室に戻ったとき。


もう既に息を引き取ったハルカを、まるで、壊れ物を扱うみたいに大切そうにその腕に抱き、


全身で、慟哭しているのが分かるのに、


それでも、浩二は、涙を見せなかった――。


医師の正式な死亡診断が下り、駆けつけたご両親が泣き崩れるその傍らで、涙を見せずただ静かに佇んでいた浩二。


こんなときは、泣いたっていいのに。


婚約者の浩二が泣いたって、誰もとがめたりしないのに。