「うん、一応、婚約者だからね。親族の人たちと、控え室の方にいるよ。なんだか、色々やることがあって大変みたい」
「そうか……」
浩二は、たぶん来られないだろうって言ってたけど、来てくれたんだ……。
「伊藤君、今日から海外へ親善試合に行くって聞いたけど、大丈夫なの?」
「ああ。焼香をすませて、浩二の顔を見たら、すぐに戻らなきゃいけないんだが……」
「そっか。忙しそうだね」
「なあ、佐々木」
「うん?」
「佐々木は、大丈夫か?」
「え? あ、うん。大丈夫、大丈夫」
心配そうな瞳に覗き込まれて、私はブンブン頭を振った。



