ハルカの容態が安定したと聞いて、思わず腰砕け状態になったあと。
幾分落ち着きを取り戻した私は、ふと『浩二はどうしたろう?』と廊下にいるはずの浩二を捜して視線を巡らせた。
でも、そこには誰もいない。
今まで、ハルカのご両親が座っていた長イスが、ポツンと残されているだけ。
あれだけハルカを心配していたんだから、容態が安定しましたと聞いて、『はいそうですか』と、すぐに帰るとも思えない。
「あれ……、浩二?」
「彼なら、ハルカさんのご両親と一緒に、部屋の中に入って行ったけど?」
「はあっ?」
その状況を見ていたらしい直也に教えられて、私は思わず点目になった。
な、なんで?
確か、看護師さんは『ご家族の方はお入り下さい』って言ってたよね?
なんで、浩二が当たり前のように、部屋に入って行くわけ?
いくら面の皮が厚い浩二だって、この状況で部屋に入るか?
っていうか、どうして誰も、それをとがめないの?
脳内を、クエスチョン・マークが団体で駆け抜ける。
本当に、浩二が集中治療室の中にいるのか確かめたいけど、家族じゃない私は入ることができない。



