好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


ハルカの容態が安定したと聞いて、思わず腰砕け状態になったあと。


幾分落ち着きを取り戻した私は、ふと『浩二はどうしたろう?』と廊下にいるはずの浩二を捜して視線を巡らせた。


でも、そこには誰もいない。


今まで、ハルカのご両親が座っていた長イスが、ポツンと残されているだけ。


あれだけハルカを心配していたんだから、容態が安定しましたと聞いて、『はいそうですか』と、すぐに帰るとも思えない。


「あれ……、浩二?」


「彼なら、ハルカさんのご両親と一緒に、部屋の中に入って行ったけど?」


「はあっ?」


その状況を見ていたらしい直也に教えられて、私は思わず点目になった。


な、なんで?


確か、看護師さんは『ご家族の方はお入り下さい』って言ってたよね?


なんで、浩二が当たり前のように、部屋に入って行くわけ?


いくら面の皮が厚い浩二だって、この状況で部屋に入るか?


っていうか、どうして誰も、それをとがめないの?


脳内を、クエスチョン・マークが団体で駆け抜ける。


本当に、浩二が集中治療室の中にいるのか確かめたいけど、家族じゃない私は入ることができない。