好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


まずは、会社の方に電話をして。


たぶん、部外者には、直接の連絡先は教えてくれないだろうから、直也と手分けして……。


頭の中で、伊藤君への連絡手順をシミュレーションしつつ、


電話をかけられる病院の外に向かうべく、私は直也と二人でその場を離れようとした。


でも。


数歩進んだとき、背後で響いたドアの開く音に、私はドキリと動きを止めた。


一秒。


二秒。


息詰まるような、数秒間の後、


背中越しに聞こえてきたのは、おそらくは看護師さんだろう年輩の女性の声。


「三池ハルカさんのご家族の方、どうぞお入り下さい」


感情を排した事務的なその声からは、その言葉が何を意味しているのか推し量れない。


息を呑み。


静かに、イスから立ち上がる人の気配。


そして、その気配は、部屋の中へと消えていく。


ハルカ……。


ハルカは……?