まずは、会社の方に電話をして。
たぶん、部外者には、直接の連絡先は教えてくれないだろうから、直也と手分けして……。
頭の中で、伊藤君への連絡手順をシミュレーションしつつ、
電話をかけられる病院の外に向かうべく、私は直也と二人でその場を離れようとした。
でも。
数歩進んだとき、背後で響いたドアの開く音に、私はドキリと動きを止めた。
一秒。
二秒。
息詰まるような、数秒間の後、
背中越しに聞こえてきたのは、おそらくは看護師さんだろう年輩の女性の声。
「三池ハルカさんのご家族の方、どうぞお入り下さい」
感情を排した事務的なその声からは、その言葉が何を意味しているのか推し量れない。
息を呑み。
静かに、イスから立ち上がる人の気配。
そして、その気配は、部屋の中へと消えていく。
ハルカ……。
ハルカは……?



