優先順位。
順番を間違えたらダメだ。
浩二のことなんか、今はどうでもいい。
肝心なのは、ハルカにとって何が一番優先されるかってこと。
「浩二、伊藤君の連絡先は?」
「……」
いつもよりも、ワントーン低い声で問いただすも、浩二は答えない。
ああ、もう。
あの時。
伊藤君に会ったとき、連絡先を聞いておくんだった。
調べられるだろうけど、今は時間が惜しい。
一刻も早く伊藤君に知らせるためには、親友である浩二に聞くのが、一番手っ取り早い。
人間。
怒りがマックスに近づくにつれて、だんだん声音が低くなるらしい。
「浩二、伊藤君の連絡先を教えて。
私が知らせるから」
自分でも、こんなドスの効いた声が出せるのかと感心するほどの低音ボォイスで、再び同じ質問を繰り返す。
でも――。
「……」
沈黙しか返ってこない。



