苦しい。 息が、出来ないよ。 「佐々木?」 耳に届く心地よい声に、 ドクンと鼓動が一際大きく高鳴った。 ――ああ、だめだ。 目眩がする。 たぶん。 私は、立ち上がったんだと思う。 大きな手の温もりと、甘い香りに包まれて、 くらくらと、酷い目眩に襲われたことは覚えている。 ただ、そこまで。 そこから。 私の記憶は、ぷっつりと途絶えてしまった――。