ご主人は、ただ、聞いてた。

俺も頭ん中が働かなくて。

そうだ、ご主人が苦しいから、俺が苦しいんだ。
胸のぽっけん中が苦しいんだ。


ただ、なんで友達が泣いているんだろうと不思議だった。

ロンドン橋の七不思議みたいに。なんで橋に住居を構えるのか、みたいな。



『なんで?私っ、なんでぇ?!なにか悪いことっ…した?してないよっ、』


泣きじゃくるJちゃん。
鼻声で、嗚咽混じりで。
とても笑ってるようには思えない。



『なんで、なんでなんで、なんでっ私?なんで?なんで?』


なんで、って言われても。

ご主人は本当、あれだ。

こりゃあ避妊しなかった癖に、妊娠したのと言われた時の最低な男。

“金なら用意するよ”に似ている。あるいは、“俺の子供なのか?”だ。


―――《私知らないよ》と思ったんだから。


この期に及んで、どうしようもない思考のご主人は無責任で。
バカの極み。