ちょっとだけ、考えてみた。






 歩夢が自分の隣から

いなくなってしまったら、と――





「――はる君…」








俺の腕の中にいる歩夢に小さく

名前を呼ばれて意識をもどす。








「……くる…し」









と、遠慮がちに言う。







いつの間にか腕に力が入っていたらしい。







「……ごめん、」





そう謝りながら腕の力を



緩めると俺の腕から抜けて



横に座りなおした。











「…今日のはる君、変だよ?」









と隣で小さくつぶやく。







「あー、ごめん。」





―――変、だなんてわかってる。





でも…そんなのはいつもだ。






自分でもこの感情が

何なのかよくわからない。




「うんん、大丈夫。

 びっくりしただけだから、」







歩夢が首を横に振りながらそう言う。






「そっか……。………あ、

 そういえばお腹空いてない?」



時計を見るといつのまにか

もう8時をまわっていた。



「……そういえばそうかも!」



思い出したように笑いながら言った。




なんとなく、無理して笑って

いるような気がした。




「……無理すんな」



聞こえるか聞こえないか位の声で小さい呟く俺を見て

目をぱちぱちさせる歩夢。





「…今…なんか言った?」




「……なんでもない、

 じゃ、作るから待ってて。」




うん、と少し不思議そうに頷く歩夢を確認してから立ち上がった。