【完】ポケット-幼なじみ-





「ごめん…」








涙ぐんで俯きながらぽつりと呟いた一言、だったはずなのに、









「謝らないでよ、あゆ…」









後ろから声がしたんだ。













振り返らなくたって、名前の呼び方や声だけでわかる。










「千夏……ほんとごめん、ね

 私…、出来なかった…。」










手をぎゅっと握りしめて、振り返らずに、そのまま千夏に謝る。









すっと目の前が暗くなったと思えば、隣に千夏が座る。









「頑張ってくれたじゃん…

 それだけで嬉しいし、
 あたしはあゆと一緒にいれる、
 それだけで十分だから。」








千夏はそういって私の肩をぽんっと叩いた。








いまは――…、千夏の、その優しさが…辛い…








そのあとは沢山泣いた気がする。







泣き過ぎてあんまり覚えてない。








家に向かいながらぼーっとさっきのことを思い出していた。








今日ははる君と一緒じゃなくて、一人だ。








用事があるから、と先に帰ってしまった。







今日はあまり会いたくないから、ちょうど良かった。






はる君にも合わせる顔がない。









…応援してくれたのに、だめだったんだもん。








そんなことを考えながら歩いていると、突然ふらっと倒れそうになって、さしていた傘を落として近くの電信柱によっ掛かった。










なんだか急に頭が痛くなってきて足にも力が入らなくなってくる。






気が抜けたのかもしれない。







家まであと数メートルなのに、どうしても身体に力が入らなくなってそのままぐたりと、もたれ掛かった。