【完】ポケット-幼なじみ-




ただ、走った。








息をする時間さえも惜しむくらい、ひたすら走りつづけた。










「……………っ」












体育館のドアを目の前にして、一回止まり、ドアを開く。








すると、体育館の中心に









真井さんは―――――いた。








ストップウオッチを片手で止め、一人で腕を組んで微笑んでいる真井さんは私をみて、クスクスと笑いだした。






いや、笑うと言うよりは何か馬鹿にしてるような態度だった。










真井さんは頬に笑みを浮かべながら、私に近づいてストップウオッチを見せた。






息をするみたいに口から出た言葉はただ、二文字だけだった。










「……嘘、」










へなへなと何かに吸い寄せられるように、床に座り込んだ。








そんな私を見て真井さんは一人、ほくそ笑んだ。











「……あたしの勝ちでいい?」










真井さんはきっと、この状況になることまでもを、予想していたんだろう。









………私は馬鹿…だったんだ。










素直におとなしくしとけば良かったのかも。









「明日から、よろしくね。」







最後にそういいのこし、足音と笑みを残しながら体育館から去っていった。