「に…二万?」


「そうだ。父さんの大学時代の友達の」


「やる!ぜひぜひやらせてください!」



昔から『人の話しは最後まで聞きましょう』と成績表に書かれていたのなんて頭から吹っ飛んでいた。

だって日給二万よ?

この不景気で失業率がワーストを更新し続けるような時代に、日給二万なんておいしい話しに飛びつかないわけがない。


目の前で呆れた表情をしている自分の父親ににっこりと笑顔を振り撒いておく。



「椿、後でやっぱりやらないとかはなしだからな。」


「言うわけないじゃん。

お父さん、私がそんな無責任な事言う娘だと思ってんの?」


「思うから言うんだ。」



呆れた表情のままの父の言葉は思うよりちょっと心が痛くなるけど、今はとにかく日給二万が優先事項。

テーブルを挟んで向かい合って座る私とお父さんは傍から見たら睨み合っているように見えたかもしれない。



「もう一度聞くぞ。

本当〜にやるんだな?」


「もう一度言うわ。

本当〜にやるわよ。」



お父さんに言われた言い方で同じように返せば、お父さんは満足したように笑って大きく頷いた。