真っ白な塗装が施された階段に負けず劣らずに、メルヘンチックなドアをくぐり抜ければまた真っ白な廊下が続いている。



「……わぉ…大理石。」


「この屋敷は迅様のために建てられたのでまだ一年しか経っておりません。

その大理石もイタリアから取り寄せたものです。」



暗に「高いんだぞ」と主張しているような陸に私はわからないくらいに眉を吊り上げ、できるだけ靴底を大理石の床に付けないように不恰好な体勢のままで陸の後を付いて歩く。



「この屋敷には迅様と私達使用人が住んでいます。
相原さんのお部屋は後ほど案内致しますので…」


「……はぁ……は?使用人?」


「はい。シェフにメイド、それに執事やハウスキーパーなどそれぞれの役割事の使用人がおります。」



それぞれの役割事の使用人がいるって…

それならバイトをしにきた私は一体どんな仕事があるんだ!

そんな事を考えながら時間が止まったかのような静かすぎる空間をひたすら歩く。



「相原さん、迅様にお会いした際はなるべく穏便にお願いできますか?」


「穏便?」


「はい。できますよね?

相原さんは立派な成人女性ですし。」



にっこり、綺麗な笑みを見せる陸は実はものすごく腹黒い気がしてしまったのは言うまでもなかったりもする。