「え?ーあ、そ、そうッ。このお兄さんがね、」 露花にそうふられ、ぶっ、と、くわえていた紅い煙草を吹き出しそうになる。 (な、何言って…) と、紫苑が言葉にするのを察するかの様に、露花は紫苑の脇腹に軽く肘鉄を入れた。 (ッぐー、) 思わぬ痛みに、紫苑の表情は苦痛に揺れた。 「じゃあ、道案内の私はここで、」 バイ、と、露花は手を振り、あっという間に紫苑の視界から消えた。 (あの女ぁー) 露花が消えた屋敷の曲がり角を睨み、紫苑は煙草を噛んだ。 苦みが口をつたう。