「ただいま、サクラ」


屋敷の大きな階段の前で、橘は声をかけた。

声の先には、陶器のお茶セットを両手で一生懸命持つ少女の姿。

橘に気づくと、笑顔がこぼれた。

「おかえりなさい、パパ」

微笑みとともに、橘の帰宅を出迎える。


「重そうだね、大丈夫かい?…これは、客用の…」

橘は、表情が硬くなった。

「サクラ、誰か来てるのか?」

「うん、おきゃくさま。わたしのへやでまってるよ」