「どうしたの?お兄ちゃん、こわいかおして」 心配そうに、少女は紫苑の顔を覗き込む。 その少女の表情を見て、紫苑はふっ、と自分の表情もゆるむのを感じた。 不思議な感覚だった。 一片の曇りもない、どこまでも純粋な、少女の表情。 紫苑を心配するだけのー 「…いや、何でもない、」 体勢を、表情を、心を立て直し、紫苑は笑顔をむけた。作り笑顔は得意じゃないが、なぜか、自然と表情が和らいだ。