「最近成宮くん、英語の授業にだけは出てるみたいね」


「藤原先生」



職員室に入り席に着くと、隣の席の藤原先生に話し掛けられた。


藤原先生は女の保健医で、歳も教師の中じゃまぁ近い方。(…といっても、30半ば)



だからか、赴任当時からよく相談に乗って貰っていた。





「他の授業には未だに出てないみたいだけど、桐谷先生惚れられちゃったんじゃないの?」


「ぶっ…!!ま…まさか!」


「あの子は桐谷先生が赴任する前までは女の子数人と一緒に保健室登校してたし、いつもつまんなそうな顔してたのよ。そう思うと彼、凄く変わったわ。桐谷先生のおかげね」




私は特に何もしてないけどな。



きっと成宮くんは

私をからかって遊んでるだけ。



でも…


藤原先生の言葉は嬉しいな。






「なんで最近、私の授業だけは出てくれるの?」




屋上に向かい、お弁当の包みを成宮くんに突き付けた。




「みーちゃんが好きだから」


「大人をからかわないで」




少し離れて座ると、スススッと隣りにやって来た成宮くん。




「たった5歳しか違わないのに大人も子供もなくね?」


「年齢じゃないわ。立場の問題よ。私はアナタの先生なのよ?」


「関係ないよ」




だって

私は学生の頃


先生は先生であって

その他の存在には絶対ならなかったし、そんな目で見た事はない。




よくドラマや小説で先生と生徒が恋に落ちる話を見るけど


そんなの現実に起こるワケないじゃない。