「違う違う。新しいボーカルにこの敦士くんをオトしたくてねー。なかなか手強いんだよ」
ユキの反応を笑いながら、強引にカウンターに引き寄せた敦士を顎でしゃくって示してみせれば、ユキは「そういうことっすか~」と浅い溜め息を吐いた。
そして大きな黒目を俺の隣へスライドさせたその瞬間、ぽかんと間抜けな表情になった。
「え。あれ?……えぇっ?!アツシって、あの敦士?!」
「声デカい、ユキ」
「だって。ちょっと待ってよ!眞樹さん、まさかコイツと組む気なんすか?」
「そ」
「ま、マジ?!」
「マジ」
ユキが、カウンターを乗り越えるんじゃないかってくらいに身を乗り出してきた。ただでさえ丸くてデカい目がますます見開かれる。
「勘弁してくださいよ眞樹さん!!こんな最悪な奴と組むなんて冗談じゃないっすよ!」
うわー、やっぱ有名だなぁ、このガキ。
そう実感しながら、そっぽ向いてる敦士を横目で見ると。
「なぁに傷付いた顔しちゃってんの、敦士くん?」
こういう言われ方するのは自業自得のくせに。
と、言いたいのを喉の奥に押し込んで、もう一度ユキに向き直る。



