「久しぶりっしょ?ちょっと中入ろうよ」
呆けたままの敦士の肩を抱え込むようにして、促した。逃げられないように。
案の定、ハッと我に返った敦士は俺の腕をどうにか振り解こうと暴れだした。
「離せよ!こんなとこ、入るわけねぇだろうが!!っざけんな!!」
いくら暴れようと俺の腕は解けない。ドラマーの腕力なめんなっての。
「まあまあ、今日の対バン粒揃いらしいから、観なきゃ損だよ、損。今後の参考に観ておいてよ」
「今後なんてっ……」
噛みつくように声を荒げてこっちを睨みつけてくる敦士の黒い瞳を、俺も同じ様に睨み返した。戦闘モードで、だ。
言っとくけど俺のガン飛ばしはかなりのもんだ。なんせ昔は横道に逸れた事ばっかりやってた腐ったガキだったから。
そんな俺の顔を見た敦士はビビったように一瞬、言葉を飲んだ。
「観とけよ、そんで一回全部壊しちまえ」
「どういう意……」
言いかけたその言葉を遮るように、俺はライヴハウスの扉に手をかけていた。重いそれを引いた瞬間、溢れ出したオトに、敦士の声はかき消された。



