いきなり子犬って。
そんな顔、してたつもりはないのに。
女はクスクスと笑いながらまた口を開いた。
「よっぽどヘコんでんだぁ。そんなにメンバーから捨てられたのがショック?」
「……っ!!」
「あ、図星?」
瞬間、女の雰囲気が変わった。急に刺々しい空気を纏った視線が俺を刺す。
嫌な、空気だ。
そう感じたのも束の間、俺は手首を掴まれていた。
「っ痛……」
綺麗にマニキュアを塗った爪が皮膚に食い込む感触。
「ちょうど良かったじゃない。アンタみたいなクズ、二度と音楽やらないで。いくら声が良くたって、人間が腐ってたら音楽も腐る」
「何を……」
「分からない?私、アンタに昔いいように使われてた女よ」
すぐ棄てられたけどね、と自嘲の笑みを浮かべた女はますます指の力を強めた。ガリ、と嫌な感触に反射的にそれを振り解く。
「そんなのっ、知るかよ!」
思わず大きな声が出て、そばを歩く人間達の視線がこっちへ向けられたけど、女はそれを気に留める様子もない。
それどころか。



