「はいはい、登ね、登。で?登はそんなに敦士のことが嫌いなの?」
嫌いどころか、とカウンターに肘をついて大きな目を細めた。
忌々しげに宙を睨む。
「あの野郎、PRISONER目の敵にしてんだよね。去年うちのハコ出禁になったのもそれが原因だし」
「マジ?何しでかしたの」
「んー、なんかもー思い出すのも腹立たしいから言いたくないんだよね」
今まで見た中で一番恐い顔した登は、手元にあったジンジャーエールをゴクゴク喉に流し込んだ。
おいおい炭酸ですけど?!
なんていう俺の心配をよそに、あっという間にそれを飲み干した登は、勢い良く空になったコップを突き出し、カウンター内にいるオーナーに声を掛けた。
「おかわりー!てかね、眞樹さん。あの野郎と組むんならとことん性根叩き直してよ。でなきゃ父さんが此処のステージ使っていいって言ったって僕が許さないから」
「ま~じで?そこまで言うほど酷いことしたわけ?」
「したんだよ。まずはね……」
やっぱりめんどくさい奴かも、と少し後悔しながらも、まあ乗りかかった船だ。とことんやってやろうじゃねぇの。と溜息を吐いた。
そして俺はその可愛い顔を仏頂面に変えた登から、敦士への罵詈雑言にも近い話を聞く羽目になったんだ。



