「え?なにが?」
こてん、と首を傾げる仕草はまるで人形。
あああ、いかん!騙されるな、コイツは男だ!
「だからそのビジュアルが罪だっての。どっからどう見ても女じゃねぇか。やめようよー、オニイサン惑わされちゃうからさ」
半分ふざけて沢口ジュニアの頭のてっぺんから足元まで視線を往復させる。そしたら目の前の小さな顔がますます膨れっ面になった。
「やめないよ、この格好は葵さんも気に入ってくれてるし」
「葵さん?」
「そ、僕の彼女」
自慢げに胸を張ったその姿と、その台詞に俺はしばしフリーズ。
え?今なんて?
「彼女、いるの?」
「いるよ」
「彼女って、女の子?」
「はぁ?なにわけ分かんない事言ってんの?女の子に決まってんじゃん。眞樹さん大丈夫?」
白い目で睨まれた。
てっきり俺は、コイツはそういう人だと思い込んでたから。
「いや、ごめん、俺てっきりお前は中身も女かと」
正直に頭を下げていた。偏見だったな、と反省。



