どうするかなぁ、と考える。そろそろ電話を掛けることにも飽きてきた。
「めんどくせぇなぁ~、ホント。でもアイツの声気に入っちゃったんだよなー」
先日、沢口さんに借りて観たライブ映像を思い出す。ちゃんとした録画じゃないから、観客の声とかノイズとか混じってた質の良くないものだったけど。
なんか、心臓にキたんだよな、あの声。
「生で聴きてぇな」
ぽつり、独り言がこぼれ落ちた。
「なに?眞樹さんマジでアイツのこと誘ってんだ?」
「うわっ!おまっ、いきなり出てくんなっての」
背後から耳打ちされて、鳥肌が立つ。弱いんだよ、耳。
じゃなくて。
「なんで今日いるんだ?PRISONER出ないだろ?」
「出なかったら来ちゃいけないわけ?僕だってなにもあの人たちの音楽だけ聴いてるわけじゃないもん」
プクッとリスみたいに頬を膨らませる沢口ジュニアは、俺の隣に腰掛ける。相変わらずの女の格好。
線の細いその身体にはぴったりの服装と、仕草に俺は思わず溜め息をこぼす。
「お前さー、罪な奴だよね」
どっからどう見ても女子高生だから。



