俺にとって、バンドは歌う為の道具。声を乗せる為の媒体だ。
自分の歌声をオーディエンスに聴かせるのに必要な付属品。
そう思ってる。
今だって、今までだって。
なのに、アイツ等は俺を要らないと。まるで紙屑みたいにあっさりと。
『敦士とやってると、俺達まで卑怯な奴等だと思われる』
『お前抜けてくんね?』
『実は新しいボーカル候補、いるんだよ』
有り得ない。俺の声で客集めてたのに、俺の声が要らない?なんだよそれ。
頭ワリィんじゃねぇのか、アイツ等は。
閉じていた目を開いて、天井を睨み付けた。まるでそこにアイツ等が居るみたいに。
「バンドなんて……くっだらねぇ」
虚しく響いた独白。
精一杯の、強がりだってのは分かってる。



