VOICE【re:venge】



やる気を削がれた。
さっきまで浮かんでたフレーズがどうやっても思い出せない。空気に溶け出すように消えてしまった。


「あ~~っ、くそっ!!」


苛立ち紛れに振り下ろしたピックが、汚い音を弾き出した。
ギターを床に放り出し、ベッドに倒れ込む。何も考えたくなくて、キツく目を閉じた。
だけど。


『俺もうお前のやり方についてけねえわ』

『お前兄貴と一緒じゃね?ダッセーの』


思い出したくもない台詞が頭の中に響く。それはアイツ等に言われた言葉。仲間だと、思ってたアイツ等に。

ジクジクと痛み出しそうな胸の奥に、出来ることなら抉り出してしまいたいくらいの無駄な自尊心。


「あー……」


天井に向かって無駄に声を出した。発声練習みたいだ。

ここ何週間かまともに歌ってない。

歌いたい。
歌いたい。
歌いたい。


『俺とヤる気ない?』


昨夜の橘の声が蘇る。

意地の悪そうな笑顔が脳裏に浮かんだのを、必死で掻き消す。
アイツとはやりたくない。絶対。

雰囲気だけでわかった。あの種類の人間が自分は一番苦手だと。

何もかも、とって食われそうな。そんな予感がするから。