「あ、敦士おかえり」
軽薄な笑みを浮かべたまま俺を迎えたのは黒瀬順市、俺の兄貴。
と、俺の女。
「何やってんの?!」
「何って~、ナニ?」
既に上半身はだけた状態で床に押し倒されてる女と、その上に跨がってる順市。コイツに至っては風呂上がりなのかほぼ裸だ。
マジで最悪。
ちらりと女に目をやれば、気まずそうな表情で胸元を隠した。今更オマエの裸見ても、と思いながら舌打ち。
「いい加減にしろよ順、毎回ヒトの女喰いやがって」
「だって物欲しそうな顔してたんだもん、この女」
悪気の欠片もありゃしない兄貴は、この期に及んでまだ女の身体を触り続けてる。
呆れてものも言えない。だいたい、俺がいないのにマンションにいる女もどうかしてる。来るなってさんざん言ったのに。
「あ」
女の声で俺の中の何かがスッと冷えた気がした。彼氏の目の前でその兄にヤられそうになってるのに、その声って。
「死ねよ」
氷点下の声で呟いて、俺はリビングを抜け、自室のドアを開けていた。
「ホンット死ね、クソ兄貴」



