俺は新しい煙草に手を伸ばした。無言のまま目の前のオーナーの顔を見つめる。少しだけ迷ってるような、微妙な間が空いた。
BLACK NOISE、ね。
ライターで火をつけながら、考える。
まだ正直動く気にはならないんだけどな。
「あのさ」
沢口さんが自分の顎髭を触りながら声を紡ぐ。躊躇いがちに。
その口から告げられた言葉は予想した通りのもので、驚きはしなかったけれど。
やんちゃ坊主のお守りはやだなぁ。
それが本音。
だけど正直、予感はしてたんだ、この時。
俺のボーカル探しは、三度目の正直ならぬ、十度目の正直になるんじゃないかな、なんて。
どこかで感じてたんだ。



