「そういえば眞樹くんさぁ、BLACK NOISEってバンド知ってたりする?」
ライブも終盤戦、そろそろ帰ろうかなんておもっていたら、カウンターの中からオーナーが思い出したように声を掛けてきた。
「あー……噂には聞いてますよ、実際見たことないけど」
確か自分らの人気の為なら手段を選ばない、汚い奴らだって噂。
コアなファン使って他のバンド潰しただとか。相手に怪我させただとか。
ここのハコ、出入り禁止になったはず、だよな。
「そのバンドがどうかしたんすか?」
くわえていた煙草を灰皿でもみ消し、沢口さんを見る。そしたら少し眉間に皺を寄せたままで苦笑しながら口を開いた。
「いや、あのバンドねぇ、去年あたり本当に素行が悪くてうちのライヴハウス、出禁にしたんだけどね。最近、解散しちゃったらしいのよ」
「あれま。気の毒に」
「ま、自業自得なんだろうけどね。素質はあったんだよねー。それでさ、まあ……これを俺が言うのもなんだと思うんだけど、さ……」
歯切れが悪い。いつもなら思ってることズバズバ言う沢口さんなのに。



