「柊子?横になって?」

えっ・・・あ・・・。

そうよね。

これから眠るんだもんね。

横にならなきゃおかしいよね?


ゆっくりとベッドに横になると、私は壁側のほうを向く。

「あれ?なんでそっち向き?」

クスクス笑ってる矢崎さんは、私がどんな顔をしているのかわかってて、からかっているんだろう。

「柊子、こっち向いて・・・」

「・・・ムリ」

そんな事出来たら、最初からそっち向いてるし!

緊張してる私を後ろからそっと抱きしめてくれる。

ふわっと温かくなった背中。

体の前に回る大きな手。


・・・すっごいドキドキする・・・。

「柊子」

後ろから矢崎さんの優しい声がする。

「・・うん?」

返事をするのが精一杯。

「・・・俺、今まで柊子に嘘は吐いてない」

「・・・うん」

「付き合ってた人の事もちゃんと言ってきたよな?」

「うん」


そうなの。


矢崎さんは付き合ってきた人の事はちゃんと言ってくれてた。

『これから行く店にいる女は前に付き合ってたことある奴だけど・・・』

私の反応を見ながら、『嫌な思いさせるってわかってる。それでも言っておいたほうがいいかなって』ちょっと切なそうに言って。

そんな矢崎さんの気持ちが嬉しかった。


「・・・紗江のことも嘘なんか吐いてない」

紗江さんの名前がでた途端、私の体がピクリと反応する。

そんな私の体を、少し強く抱きしめる。