貴公子と偽りの恋

「野次馬に来られると嫌だから、鍵を締めとくな?」

「うん…」

という事は、私と香山君はここに二人だけ?

ところでここって…

「わあ、屋上だ…!」

誰もいないだだっ広い空間。手を伸ばせば届きそうな、低く垂れ込めた空の雲。

「私、ここに来たの初めて。裕樹はよく来るの?」

「いや、俺も2回目。今日も曇ってるから、ここでいいかなと思って…」

「…ああ、お弁当だよね? 食べよっか?」

「おお」

二人で辺りを見渡し、コンクリートだけど、座り易そうな高さの出っ張りを見付け、そこに座る事にした。

スカートのお尻が汚れそうだけど、いいか。

少し戸惑ったけど、私が座ろうとしたら、「ちょっと待て」と香山君が言った。