貴公子と偽りの恋

階段を上がり切った所に鉄の扉があり、香山君はズボンのポケットから鍵を取り出し、扉の鍵穴に差し込んでいる。

私は香山君に握られた左手の感触に浸っていた。

香山君の手は大きくて、少し固くて、ひんやりしていた。

その手で、香山君は私の小さくて華奢な手を、包み込むように握っていた。たぶん力を加減して。

そんな所にも、私は香山君の優しさを感じる…

私は、香山君の手の感触が残った自分の手を、熱くなった頬にそっと当てた。


「どうした? 行くぞ」

「え? あ、はい」

香山君が、鉄の扉を大きく開けていた。

私が扉を通ると、香山君はバタンと扉を閉め、カチャという音がした。