貴公子と偽りの恋

私は恥ずかしさで顔が熱くなり、俯いていた。

「先輩」

「あ、はい」

「時間がないから、すぐ行きましょうよ?」

「行くって、どこへ?」

「裏庭か科学室ですよね? どっちにしますか?」

「え? じゃあ、科学室?」

「分かりました」

そう言って竹中恵はスタスタと歩き出し、私は慌てて後に続いた。

ずいぶん勝ち気そうな子だわ。香山君って、こういう子が好きなの?

締め切った科学室のドアを竹中恵が開けると、中から鼻にツンと来るような薬品の異臭がした。

中へ入ると竹中恵はクルッと私を振り向き、『どうぞ』と言って目を閉じた。