貴公子と偽りの恋

「え?」

「いいんじゃない? 条件を飲んでみれば?」

「お母さん…」

「どうせコンタクトは作った方がいいって思ってたし、たまに髪型を変えるのは楽しいわよ。化粧をするのかしら? ま、それもいいんじゃない? 違う名前で呼ばれるのは、ちょっと悔しいけど」

「お母さん、いいの?」

「仕方ないでしょ? 他に選択肢がないんだから。それにね、私の勘だと…」

「お母さんの勘だと、何?」

「やっぱり、言わないでおく」

「気になるから言ってよ」

「ううん、本人が自分で気付かないといけない事だから、言わない」

本人って、私? それとも香山君?

「ただし、ひとつだけお願いがあるの」

「私に?」

お母さんはゆっくり頷いた。

「外見をどんなに変えても、中身は変えないでね?」

「………」

「優子はとってもいい子なんだから、そのままでいてほしいの。約束してくれる?」

「うん」

「機会があったら、香山君を連れて来て? どんな子か、見てみたいわ」