貴公子と偽りの恋

「優子はバカ正直だな」

そう言って紳一はフッと笑った。

「去年、優子が書いた短冊、見ちゃったんだよね」

「え? 見たの?」

「ああ。でも、意味が分からなくて、すぐに忘れてた。今年、優子と同じ高校に入るまでは」

「そ、そう?」

「実は今年の短冊も見たんだ」

「え?」

私は思わず立ち止まって、紳一の顔を見上げた。
紳一はどこか遠くを見る目をしていた。

「そんなに香山裕樹が好きなのか?」

「え? う、うん」

私は恥ずかしくて下を向いた。

まさか、弟とこういう話になるとは思わなかった。