貴公子と偽りの恋

よっぽど開封せずに捨ててしまおうかとも思ったが、書いた人の気持ちを思い、それはとどまった。

『貴公子』は止めても、心まで変える気持ちはない。
人への思いやりやマナーは、これからも持ちつづけよう。

その封筒を団扇代わりに、パタパタ仰ぎながら教室へ入ると、ここでも同じく女子達が笑顔で挨拶してくる。

俺が表情を変えずに『おはよう』と低い声で言うと、やはり女子達は戸惑っていた。


遼がいた。

「よお」

「おお。また下駄箱にか? それ」

「ああ」

「大変だな」

「まあな」

机の上に鞄をドスンと降ろし、俺は早速ピンクの封筒をピッと開けた。