今日から俺は、ヘラヘラ笑うのを止めた。
『微笑みの貴公子』は廃業だ。

校門の辺りから、たくさんの女子が俺に声を掛けてくる。顔を赤くして、『裕樹様、おはようございます』なんて言ってくる。

昨日までの俺は、その一人一人にヘラヘラ笑いながら『おはよう』と応えていた。

しかし今日の俺は、表情を変えずに小さく頷くだけ。

女子達が戸惑っているのは分かったが、俺の知った事ではない。
その内、気安く声を掛けなくなるだろう。その方が有り難い。


下駄箱を開け、上履きに手を伸ばそうとしたら、その上にピンク色した封筒が乗っていた。

ああ、またか。偽りの俺に惚れた、愚かで哀れな女からの手紙だろう。