貴公子と偽りの恋

「あ、そうだ」

しばらく沈黙した後、何かを思い出したように裕樹は言った。

「優子に是非やってほしい問題集があるんだ。第一志望のW大に合格するには、あれは必須だと思うぞ」

「そうなの?」

「ああ、間違いない。やってみるかい?」

「うん、是非!」

「じゃあさ、一日でも早い方がいいから、帰りにうちに来いよ。その問題集を渡すから」

裕樹の家に?
私はまだ、裕樹の家にお邪魔した事がなかった。

「今日はうち、誰もいないからさ」

「それって、問題集と何か関係あるの?」

「あ、関係ないよな?」

「本当に問題集を貸してくれるだけ?」

「もちろん」

「ほんと?」

「ほんと、ほんと」

「ん……じゃあ行くね」

私はほんの一瞬だけど、今日着けてる下着の事を考えた。

本当に、一瞬だけど…


(夏期講習−優子Side 完)