授業がやっと終わって休み時間。私はすぐに恵子に声を掛けた。

「ねえ、恵子」

『なあに?』とゆっくり振り向く恵子。

「肝心な話って何?」

「ん…何だっけ?」

「もう、恵子ったら…」

「ごめん。あ…そうそう、思い出した」

「うんうん」

「短冊よ。今年もまた、あれを書いたの?」

恵子にだけは、私の香山君への想いを伝えてある。そして去年と一昨年、その想いを七夕の短冊に書いていた事も…

「うん、書いたよ」

「やっぱりね。ねえ、優子?」

「なあに?」

「短冊に書いて願いを託しても、それだけじゃ願いは叶わないと思うよ」