竹中恵似に変身した篠原優子と電車に乗り、彼女が遼の噂を知らない事に俺が驚くと、

「私、噂に疎くって…。裕樹の事しか見てなかったし…」

と優子がポツリと言った。

その瞬間、また俺の心臓がドキンと跳ねた。

何なんだ、これは…
竹中恵似の顔で言われたからか?

俺は胸のドキドキが治まらず、優子の顔を見られなかった。

「どうしたの?」

「ど、どうもしねえよ。あのさ、無理にバレーの話とかしなくていいから。それと、メグだったらどんな話するのか、とか考えなくていいから」

気が付けば、俺はそう言っていた。

自分でもなぜか分からないが、竹中恵に成り切った優子ではなく、優子自身と話がしたかった。