家に帰ると、やっぱり両親の説教が待っていた。





けれど今はそれほど苦でもない。





「勉強はします。でもカエデのやりたいことまで制限しないで下さい」





そう言うと両親は何も言えなくなっていた。





兄貴は言えなかったこと。





「ウチは兄貴の分まで勉強もバンドもがんばるよ」





少し涙の匂いがする兄貴の部屋で、取り出したベースにささやいた。





「だから、見守っててね。兄貴」





あの日、雨の中で見た背中を今も鮮やかに思い出す。





その足取りはまるで踊るようだったと。