コードの押さえ方やスラップ奏法の仕方、ツーバスの時はいかにカッコよく目立つように叩けるかを兄貴と競っていた。





何をやらせてもそつなくこなすマルチな兄貴はウチの憧れで、絶対に越えられない壁だった。





高い、高い壁。





今も、越えられない。





「―――そうだ。合宿しよう」





「高峯、どうした? 終わったのか? だったらもう出てもいいぞ。30分経ったからな」





ウチは教師の言葉なんて無視して遠くの窓から空を見ていた。