たった1回の人生だし、“大学生”って気分を味わってみたかった気もする。
「そっか……」
ポン、と頭に置かれた手。
俯きがちだった顔を上げれば、複雑そうに私を見る聖くん。
いつもみたいに、明るく笑ってくれればいいのに。同情…かわいそうって思われてるのかな。
こういう表情を見れば、普段ふざけててもやっぱり大人なんだな……って思う。
「行ったら私もモテモテだったかもね」
あたしの発言にしんみりとしてしまったこの状況をどうにかしようと言ってみた。
すると、ふって笑った聖くん。
「そうそう皆に狙われて……って、あ!!」
何かを思い出したかのように突然大きな声をだされて、私の体はビクッとしてしまう。
心臓に悪い。……どうしたの?という視線を聖くんに向ければ、聖くんが急に真顔になって。
私の頭をガッと掴む。
何!?
「狙われて……で思い出した。実はさ、秋の―――」
「―――何してるんですか」
ぐっと見つめた先の聖くんの口から続いて出てくるはずの言葉は、遮られて。
頭に変な重みが……と上を見れば、私の頭に置かれたままだった聖くんの腕を掴む…
……高橋。



