「え、やっぱりお昼まだ?」
空きだした食堂内を見回した高橋。
聞けば「まだですよ?」と当たり前かのように帰ってくる。
「だって……もう昼休み終わりじゃない?」
「今日は少しズレたから」
「あっそ」
「自分から聞いたくせに……」
大変だ、と思う。
前に入院していた時は、高橋なんかどーでも良くて。
どんな仕事してたとか、今日は何時から何時まで仕事とか、全く知らなかったし知らなくて良いって思ってたけど。
医者、って言うのは、びっくりするくらいハードだ。
「買ってきますね」
立ち上がって、券売機の方に歩いていく高橋。
離れて行っていても、背が高いからか見える。
患者さんの家族か、高橋は挨拶をされて返してた
……あの笑顔で。
あ、このトレーついでに返してきてって頼めば良かった。
しばらくして戻ってきた高橋が選んできたのは、豚のしょうが焼き定食。
食べ始める高橋を見ながら、テーブルの上に置いた腕に頭を乗せた。
「眠たくなった?」
すぐにそれに気づいた高橋が箸を止めて聞いてくる。
「んー……違う」
「どうしたの?」
「それ美味しい?」
「は?」



