「誰かお探しですか」
白衣を引っ張りながら高橋に話し掛けると、高橋がすぐにこちらへと振り返った。
「あ、はい…」
眼鏡の奥の瞳が、あたしを捕える。
驚いたように目を見開いてそして、すぐに安堵したような表情。もう発作を起こすこともないのに、何を心配することがあったんだか。
「いた!」
「いたけど?」
「早速部屋抜け出して……もう。で、何してるんですか」
その問い掛けに、視線を逸らす。
でたよ、すぐ聞く。
ここで、何してたかなんて聞かなくてもわかるくせに。
「……こっち」
立ち話も何だし、まだ食べ終わったトレーも返しておらず置きっぱなし。
高橋を誘導するように踵を返して歩きだすと、後ろにピッタリついてくる気配。
「相変わらず我が儘ですね」
「……何が」
席にたどり着いて私の向かい側に座った高橋が食べ終わったトレーを見る。
「どうしてここで食べてるんですか」
「……食べたかったから?」
「僕に聞かれても」



