秋なら余裕余裕。


だけど、心ちゃんは、持ってこられたデザイン云々よりも、値段に真っ青になる。


「こちらのデザインですが……」

そう言って話し出す店員。

きっと隣の心ちゃんには全然入ってないんだろうなぁと思いながら説明を聞く。


「ご試着されてみてください」


「え、」

「してみれば?」


「いいです、いいです」


せっかくなのに。

そりゃ店員さんが白い手袋して厳重に触ってれば気が引けるのも分かるけど。

「……どう?これ」


「どうって……」


じいっと指輪を見つめる心ちゃん。

「あの、ペアリングなんですけど、ペアでデザインが違う物ってありますか…?」

やっと喋ったかと思えば、

控えめにそういう心ちゃん。

「え何で?同じデザイン嫌なの?」


「いや、嫌ってわけじゃないけど…あからさまにペアですって言うのもどうかと」


そういう心ちゃんに、店員さんがカタログをパラパラと捲る。