「具体的な希望などはございますか?」
「そうですね、取りあえず一番高いの見せてください」
「聖くんっ、」
びっくりしたような心ちゃんの声が控えめに俺に届けられる。
俺がそんなこと言うと思ってなかったのだろう。
一瞬固まった店員さんはすぐに笑顔を作り直して、こちらにかけて少々お待ちくださいとどこかのケースへ歩いていく。
「ななな何言ってんの」
「何がって希望でしょ?」
「一番高いのって、」
馬鹿じゃないの!って慌てた心ちゃんの声。
この空間で怒鳴りたくても怒鳴れないんだろう。
それに笑いが出る。
「いいじゃん。秋医者だぜ?払えるって」
俺の給料と比べ物にならないくらい貰ってんだから。
「いやいやいやいや」
「医者なめんな。独身だし、無駄遣いしてないし、ってかする暇無いし、貯め込んでるぜあいつ」
今こそそれを使う時だろう。なぁ、秋。
しばらく待っていれば、
持ってこられた指輪。
値段を見て……まぁ一番高けりゃこんなもんかと思う。



