数日前。

荷物を取りに来た心ちゃんに頼まれたのだ。


指輪の下見に付いてきてほしいと。


「だって高橋の前であーだこーだ悩むのちょっと申し訳ないじゃん?」


「悩めばいいじゃん」


「や、ほら値段とかそんなので気にしてるとか思われたくないし」


「気にしなくていいじゃん」

「気にするって!!!」


そういう心ちゃん。別に暇だからいいけどさ。


「多分あたし決めきらないから、大体の目星だけ付けときたいの」


「え、お店は決まってんの?」

「……うん。この前ね、秋があそこの店行こっかて言ってて」


なるほど。


そう言われて、俺も自分の勉強になるかなーって思ったものはいいものの。


「……入りづらい」


「はぁ!?」


百貨店の1階。上質な店構えのそれを見た瞬間、足が止まった心ちゃん。


嘘だろ…と思いながら振り返る。