「あたしがアイス食べたいって言ったら、ダメって言いながら高橋が買ってきてくれたんだよね」
入院してた時。高橋が言うように、あの時はあたしが熱を出して今とは逆だった。
「……アイスじゃなかったけどね」
「………」
「アイスじゃなくて”氷”だったけどね」
「味が付いてただけ良しとして」
ぽそり、そういう高橋に笑う。
あの時はアイスもダメだって言われて、
しょうがないから味のついた氷を買ってきてくれたんだよね。
「いいなぁ。高橋はチョコのアイス食べれて」
手のアイスを見ながらそう言えば、高橋の左手がトンとあたしに触れる。
「心だって食べれるでしょ…?」
「今ならね」
そういう高橋。
そうだよ。今ならあの時食べれなかったアイスをこうして食べることができる。
「ね、心」
「んー?」
アイスから高橋へと視線を向ければ、少し考えるようなしぐさをした高橋。
「どした?」
「……あの時は、心の我儘を僕が叶えてあげたんだよね?」



