「好き……」

吐きだす空気だけで、

高橋が笑うのが分かる。


「今日は素直だ」


そういって笑う高橋を間近で見て、好きって気持ちが溢れる。


「だからね…」

泣きじゃくりながら伝えるこの気持ちはきちんと高橋に伝えたい。

「悲しそうな顔しないで。あたしよりも苦しそうな顔をしないで」

あたしはもう、大丈夫だから。

いつも見る、高橋のあたし以上に苦しそうな顔。

「うん」

ずっ、と鼻をすすれば、じゃあ、と高橋も口を開く。


「心も、言いたいことを飲み込まないで。気になることは僕に聞いて?僕をもう少し頼って?」

「でも……」

「何も頼ってもらえず不安になられるのは困る。肝心なことを言わないから。ちゃんと聞くから。どんなことでも。」

どんな不安でも。

そう言って微笑む高橋。


「それにね、…離れてるのが心配なら、絶対に離れないようにするってこともできるんだよ?」


不意にそう言った高橋。


ぱちぱちと、瞬きを繰り返せば、高橋は一度視線を合わせて微笑んで、落とす。


それって……


するっと熱い高橋の指が、私の指に絡まる。


親指と中指が左手の、薬指をなぞる。

それは。


はっと顔を上げると、そのまま高橋もあたしと視線を合わせる。


「…そういうこと」


へらっと笑った高橋に涙が止まらない。


「普通の生活が送りたいって願いも叶えたけど…また心の願い叶えることになるね」


いつか言った。願い。



―――彼氏なんかできない。



―――結婚なんかできない。