高橋の家に向かって走り出した車内。


さっき、聖君の家での引っ張り合い、そして発作ですっかり体力を消耗した。


ぐったりとシートに体を預ける。

聖君も、高橋のことを考えているのか、それともさっきすれ違った女の人とのことを考えてるのか。一言も言葉を発さず黙々と車を運転している。


聞くな、ってオーラ出してるし。

見てはいけないあたしの前での聖くんではない”聖くん”を目撃してしまった気がする。






―――少しきまずい雰囲気の中たどり着いた久々の高橋のマンション。


一歩前を早足であるく聖君について、家に入る。


「きっと…このままじゃ治るもんも治らない」


入る前、玄関で振り返った聖君は私にそう言った。


「できることなら今までも苦しい思いをしてきただろうし無理に苦しい思いをさせたくない。
俺の家で、発作が起きずに幸せに暮らせるならそれでもいいと思ってる。ずっといてくれてもいいと思ってるよ」

聖くんの優しさはすごく分かってる。いつも、優しく背中を擦ってくれるから。

頷けば、ごめんな、と言われる。

「だけど、それじゃ心ちゃんは良くても・・・・秋が壊れる」

「え?」


高橋が?



「……お互いがお互いのことを良く分かりあうべきなんだよ。罪悪感とか気遣いとかそういうのなしで。それでお互いが傷ついても、言いあうべきなんだよ」


「聖くん、」